第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<27>
プロ野球ではシートの価格設定を見直した球団があります。
「価格(PRICE)戦略」というのはマーケティングの4Pの一つとして大事な集客戦略です。
それで、どう見直したかというと、従来よりもシートのバリエーションを増やしました。
例えば三千円・五千円・一万円の三種類だったとしたら、それを五種類、六種類に細分化、買いやすくしたのです。
多様化するニーズや広がる格差に対応したこのやり方でシーズン中の観客動員を回復させたそうです。
コンサートでもこうした価格の細分化を試してみる価値はありそうです。
できれば思い切って数百円のシートから数万円のシートまで幅を広げてはどうでしょう。
「そんなことしたら管理が面倒なことになる」と思われるかもしれません。
でも、そうなれば、従来のような十把ひとからげのサービスを見直す良い機会にもなります。
安価な席は安価な席なりの効率的なサービスを、高価な席は高価な席なりの高品質なサービス(ホスピタリティ)を提供する必要が出てくるからです。
効率的なサービスや高品質なサービスをあれこれ考案して実行するということは、新たなサービス体制や収益モデルを生み出すきっかけにもなります。
それはコンサート等の主催者にもホール運営者にとっても、サービスやホスピタリティのあり方を見直し集客力を強化するためのよい意味での試練になります。
シートの価格差を広げると平等性がなくなると言う意見もあるかもしれませんが、それは考え方次第。
幅広い層の人たちに門戸を広げられるメリットはあります。
なぜなら、金銭的な余裕がある人に高額で高付加価値のシート(チケット)を買ってもらえば、その分、学生とかフリーターといった金銭的に余裕がない人に向けて安価なシートを用意にすることができるからです。
実はこの考え方、決して新しいアイデアではありません。
歌舞伎の世界で昔からあるやり方です。
リッチな旦那衆は大枚払って「桟敷席」でお弁当を広げて優雅に見物してもらう。
反対に余裕のない人は「幕見席」で一幕だけ見る、という。
ちなみに「幕見」とは、三幕で構成されることの多い歌舞伎の一幕に限り格安料金(数百円~)で鑑賞できる席のこと。
役者志望の学生や若手芸人などに重宝されているようです。
また、幕見席は「通の人が通う席」ともいわれていて、「前に見たあの名場面をもう一度…」といったニーズや、「今日は時間があまり無いけれど少しだけ見たい…」といった、きめ細かなニーズにも応える、実によく考えられたシステムです。
現代的なマーケティング感覚が伝統芸能の歌舞伎にあったなんて本当に驚きですね。
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