第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<19>
ところが、公演から戻った学生にどうだったか聞いてみると、「炭琴」の陰も形も現れなかったといいます。オーケストラの側でそうした公演先の情報を事前に把握していなかったのでしょう。実に残念なことです。
地方の講演会に呼ばれる講師は、その地域についての下調べは当然のようにします。
講師によっては早めに現地入りして地域を視察してまわったりすることも珍しくはありません。
営業マンだってそうです。初訪問の企業なら、その会社のことを事前にウェブサイトでチェックしたり、業界の動向をいろいろ調べたりして行きます。
また、営業先がはじめて訪れる土地だったら、その土地の特殊な事情があるかどうかも下調べします。
これが普通のビジネス感覚です。初歩的なマーケティング感覚です。
ところが音楽の世界はそういうことがほとんどありません。事あるごとにそれを感じます。
マーケティング感覚も、顧客サービスとか顧客満足(CS)といった意識も薄いということです。
オーケストラだって地方講演に行くのなら、公演先の事情を知り、地元の人たちに喜ばれるようなプログラムを考えるのは大事なことだと思います。
どこへ行っても同じプログラムの繰り返しでは工夫が足りないといわれても仕方ありません。
もっといえば、招聘先にとっての目的は「演奏を聴く」ことではなく、演奏を聴くことで得られる刺激であったり、交流であったりするはず。
また、教育が目的の公演もあれば、地域の活性化が目的の公演もあるでしょう。
その目的や狙いはいろいろです。
音楽をプロとしてビジネスとして提供する人は自分たちの音楽活動は「手段」であって、その先にある「目的」は何なのかということまで視野に入れるべきだと思います。
演奏を聴かせるだけでなく、演奏会を開く狙いは何なのか、どうすれば観客が参加でき、楽しめるのか、そういうところにも目を向けて欲しいものです。
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