第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<33>
この章の最後にコンサートにおける「不」の付く言葉をいくつか洗い出してみました。
「当たり前」を見直す参考にしてください。
【不便】▼演奏が始まったら入れない、出られない
一曲一曲が長いクラシック。トイレの近い高齢者にどう対応していく?
【不平等】▼演奏会には乳幼児を連れてこられない
託児サービスや子供たち向けの音楽プログラムは考えられないか
【不平等】▼聴覚障害者は演奏が聴けない
骨伝導補聴器のレンタルとかサウンドビートだけでも感じられるような方法はないか
【不満】▼曲目は運営者や演奏者が勝手に決めている
リクエストを事前受付できないか
【不信】▼コンサートに行ってみないと良し悪しがわからない
公開リハーサルはできないか。また、お代はステージの後に観客が自由に決められるようなやり方はできないか
【不親切】▼音楽会場周辺の情報や交通機関の情報をスタッフにたずねてもわからない
ホテルのようなコンサート・コンシェルジュをホールにも配置できないか
ここに挙げたのは、ほんの一例です。
他にも、「不」の付く言葉は、「不安」、「不快」、「不都合」、「不釣り合い」、「不適切」、「不当」、「不必要」、「不服」、「不平」、「不本意」、「不愉快」、「不自由」「不備」、「不埒」などたくさんあります。
これらの言葉から、観客が会場で感じている「不」、あるいはチケット購入や予約に関する「不」を洗い出し、見直していけば、「期待」→「満足」→「継続」の好循環を生み出せるはずです。
それが集客の大きな原動力になります。
売れる音楽×買わせる音楽 第3章>参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵
第3章~コンテンツ・クイズ 【Q1】師走の第九コンサート、全国で盛んになった理由は? 【Q2】集客に効く「第九方式」とはどういうこと? 【Q3】コンサートの直後、人は「〇〇欠乏症」になる。「〇〇」に入る言葉は何? 【Q4】観客動員のためプロ球団が行った、試合前の〇〇〇〇タイムとは? 【Q5】アキバ系アイドルファンのコミュニケーションにも。その応援スタイルとは? 【Q6】バックヤードツアーもある本場ニューヨークのエンターテインメントは?
2012年4月5日木曜日
3-32>ホール、主催者、出演者が三位一体となって「特色」を出す
第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<32>
これから先、「参加」や「コミュニケーション」といった経験プログラムは音楽ステージ・ビジネスの価値を高める手法としてますます重視されるようになってきます。
そしてそれは常に進化させていくことも求められます。
同じ事を繰り返すだけではいわゆるコモディティ化は避けられないからです。
ただ、「参加」や「コミュニケーション」といったプログラムのアイデアはいろいろ打ち出せたとしても、それを実現するためには、クリアしなければならない大きな課題があります。
それはホール運営者とイベント主催者と出演者の三者がそれぞれ前例主義を打ち破り、互いに譲歩し刺激しあって「特色」を出そうとする姿勢。
そういう努力と協力をおしまないで三位一体の体制がとれるかどうか。
すべてはそこにかかっています。
ホール運営者は「あれはダメ、これもダメ」といった官僚的な事なかれ主義や前例主義を改める。
また、イベント主催者はいろいろな新しいアイデアをホール運営者にも出演者にも提案し、協力を仰ぐ。
そして出演者も音楽だけでなく、音楽といっしょに、また音楽を通じていかに素敵な「経験」を観客にもたらすことができるかを模索する。
そういう三者の姿勢があってこそ、素敵な経験を提供できます。
もし、この三者が手を組み、観客に素敵な経験を提供するために、あらゆる手立てを講じようと一致団結すれば、今まで「無理だ」と思っていたことでもできるようになるはずです。
そうなれば、専用劇場に引けをとらない「特色」が生み出されるのは間違いありません。
観客との「コミュニケーション」が大切だと、ここまで書いてきましたが、
実は、ホール運営者とイベント主催者と出演者、この三者のコミュニケーションこそ、
これからの音楽ステージ・ビジネスを盛り立て、進化させていく上で最も重要な課題ではないでしょうか。
三者がそれぞれこれまでの「当たり前」としてきたことを見直し、観客が感じているさまざまな「不」を解消する。
それが音楽ステージ・ビジネスの未来を拓くことになるはずです。
これから先、「参加」や「コミュニケーション」といった経験プログラムは音楽ステージ・ビジネスの価値を高める手法としてますます重視されるようになってきます。
そしてそれは常に進化させていくことも求められます。
同じ事を繰り返すだけではいわゆるコモディティ化は避けられないからです。
ただ、「参加」や「コミュニケーション」といったプログラムのアイデアはいろいろ打ち出せたとしても、それを実現するためには、クリアしなければならない大きな課題があります。
それはホール運営者とイベント主催者と出演者の三者がそれぞれ前例主義を打ち破り、互いに譲歩し刺激しあって「特色」を出そうとする姿勢。
そういう努力と協力をおしまないで三位一体の体制がとれるかどうか。
すべてはそこにかかっています。
ホール運営者は「あれはダメ、これもダメ」といった官僚的な事なかれ主義や前例主義を改める。
また、イベント主催者はいろいろな新しいアイデアをホール運営者にも出演者にも提案し、協力を仰ぐ。
そして出演者も音楽だけでなく、音楽といっしょに、また音楽を通じていかに素敵な「経験」を観客にもたらすことができるかを模索する。
そういう三者の姿勢があってこそ、素敵な経験を提供できます。
もし、この三者が手を組み、観客に素敵な経験を提供するために、あらゆる手立てを講じようと一致団結すれば、今まで「無理だ」と思っていたことでもできるようになるはずです。
そうなれば、専用劇場に引けをとらない「特色」が生み出されるのは間違いありません。
観客との「コミュニケーション」が大切だと、ここまで書いてきましたが、
実は、ホール運営者とイベント主催者と出演者、この三者のコミュニケーションこそ、
これからの音楽ステージ・ビジネスを盛り立て、進化させていく上で最も重要な課題ではないでしょうか。
三者がそれぞれこれまでの「当たり前」としてきたことを見直し、観客が感じているさまざまな「不」を解消する。
それが音楽ステージ・ビジネスの未来を拓くことになるはずです。
3-31>音楽という「経験」を売っているステージ・ビジネス
第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<31>
他にも、アフリカンドラムを全客席に用意し、出演者と一緒になってドラムをたたいて楽しむ「ドラムストラック」という参加型ライブイベントにも注目が集っていますが、
こうした経験プログラムを開発することを「エクスペリエンス(経験)・デザイン」といいます。
そして「経験」という無形の価値がモノやサービスの価値を決定付ける要因になってきたため「経験経済」の時代ともいわれています。
消費が成熟した現代では何を売るかよりもどう売るか、
どんな「経験」をしてもらうかが競争力の源泉になるからです。
物販業でもエンターテインメント色を強めているのはそのためです。
わかりやすい例を挙げれば、ビョーンと伸びる「トルコアイス」。
あれを買うときは必ずトルコ人におちょくられますよね。
差し出されたアイスを受け取ろうとすると、すっと引かれ、
また、ある時には目の前でアイスをコロッと逆さにして落とすふり。
そういうパフォーマンスを繰り返し驚かせ笑いを取るのが彼らのスタイル。
トルコのアイス売りはアイスと一緒に愉快な経験を売っているのです。
もう一つ、ついでにアイスクリーム売りのネタで言えば「コールド・ストーン」というアイスのテイクアウトチェーンもそう。
注文すると店員さんが目の前でアイスの調合やトッピングをしてくれます。
しかも歌いながら踊るように。
このどちらもアイス売りという物販業に経験プログラムを採り入れ、「買う」という行為、「待つ」時間をエンターテインメントに変えています。
物販業でもこのように「買い物経験」を楽しくしようとエンターテインメント色を強めています。
ましてやステージ・ビジネスは音楽を主とした「経験」を売っているのですから、
その「経験」をもっと楽しいものにしよう、刺激的にしよう、感動的にしようと試みるのは当然の使命です。
物販業に遅れをとっている場合ではありません。
だからステージ・ビジネスに携る人は「経験」を商っているという意識をもっと高め、
ステージの演出だけでなく、チケットをもぎるにしろ、プログラムを手渡すにしろ、荷物を預かるにしろ、
どんな些細な行為でもそれが「顧客経験」となってコンサートの満足度や感動を高め、
次につながるんだという意識を持って欲しいと思います。
ステージの演出、観客とのコミュニケーション、さらにはちょっとした接客行為まで幅広い顧客経験、
それらのどこをどうデザインするかによって専用ホールでなくてもホールの「独自色」は出せるはずです。
他にも、アフリカンドラムを全客席に用意し、出演者と一緒になってドラムをたたいて楽しむ「ドラムストラック」という参加型ライブイベントにも注目が集っていますが、
こうした経験プログラムを開発することを「エクスペリエンス(経験)・デザイン」といいます。
そして「経験」という無形の価値がモノやサービスの価値を決定付ける要因になってきたため「経験経済」の時代ともいわれています。
消費が成熟した現代では何を売るかよりもどう売るか、
どんな「経験」をしてもらうかが競争力の源泉になるからです。
物販業でもエンターテインメント色を強めているのはそのためです。
わかりやすい例を挙げれば、ビョーンと伸びる「トルコアイス」。
あれを買うときは必ずトルコ人におちょくられますよね。
差し出されたアイスを受け取ろうとすると、すっと引かれ、
また、ある時には目の前でアイスをコロッと逆さにして落とすふり。
そういうパフォーマンスを繰り返し驚かせ笑いを取るのが彼らのスタイル。
トルコのアイス売りはアイスと一緒に愉快な経験を売っているのです。
もう一つ、ついでにアイスクリーム売りのネタで言えば「コールド・ストーン」というアイスのテイクアウトチェーンもそう。
注文すると店員さんが目の前でアイスの調合やトッピングをしてくれます。
しかも歌いながら踊るように。
このどちらもアイス売りという物販業に経験プログラムを採り入れ、「買う」という行為、「待つ」時間をエンターテインメントに変えています。
物販業でもこのように「買い物経験」を楽しくしようとエンターテインメント色を強めています。
ましてやステージ・ビジネスは音楽を主とした「経験」を売っているのですから、
その「経験」をもっと楽しいものにしよう、刺激的にしよう、感動的にしようと試みるのは当然の使命です。
物販業に遅れをとっている場合ではありません。
だからステージ・ビジネスに携る人は「経験」を商っているという意識をもっと高め、
ステージの演出だけでなく、チケットをもぎるにしろ、プログラムを手渡すにしろ、荷物を預かるにしろ、
どんな些細な行為でもそれが「顧客経験」となってコンサートの満足度や感動を高め、
次につながるんだという意識を持って欲しいと思います。
ステージの演出、観客とのコミュニケーション、さらにはちょっとした接客行為まで幅広い顧客経験、
それらのどこをどうデザインするかによって専用ホールでなくてもホールの「独自色」は出せるはずです。
2012年4月4日水曜日
3-30>一般ホールに専用劇場「成功のエッセンス」を採り入れる
第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<30>
専用劇場でロングラン公演というステージ・エンターテインメントビジネスが成功している一方で、
公共ホールなどの多目的な会場の多くが苦戦しています。
専用劇場というのは劇団四季の「キャッツ」専用の円形劇場をはじめ、
東京ディズニーリゾート隣にオープンしたシルク・ドゥ・ソレイユ専用の「シアター東京」、
また「BLUE MAN GROUP」のために作られた六本木の専用シアター「インボイス劇場」など。
ちなみにBLUE MANは大量に水を使うためステージには排水溝まで装備され、
前列席には水が飛んでくるのでポンチョ着用のシートまであるくらいです。
ただ、こうした専用劇場でのエンターテインメントが連日多くの観客を集めているからといって、
公共ホールなどの多目的施設を専用劇場に作り替えるわけにもいきません。
お金もかかり、リスクもあるから、そう簡単にはできません。
だったら、こんなふうに考えてみてはどうでしょう。
専用劇場「成功のエッセンス」を採り入れられないか、と。
では、専用劇場の成功エッセンスとは何でしょう。
月並みな言い方をすれば「特色」を出すということ。独自性、斬新性です。
さらに、その「特色」とは何かと言えば、観客に新しい「経験」を提供することです。
驚きや意外性のある「経験」。コミュニケーションしたり参加できたりする「経験」を。
例えば、最近では演劇や映画で「香り発生装置」を採用し、
シーンに合わせて香りを発生させるといった試みも見られます。
映画「チャーリーとチョコレート工場」を上映した一部映画館では甘いチョコレートの香りを、
また芝居の特定のシーンになると花の香りを場内に漂わせて臨場感を高めているステージもあります。
視覚、聴覚、嗅覚とくれば次に考えられる「経験プログラム」といえば「触覚」。
その触覚に働きかけた例もあります。
音楽のビートを身体で感じられるシートを用意した映画やコンサートもそうですし、
また、聴覚障害者を招いたコンサートでバルーンを用意し、それを膝の上に抱えてもらい、
音楽を身体で感じられるようにした例もあります。
すごくシンプルな方法ですが、これはこれでとても素敵な「経験プログラム」だったのではないでしょうか。
専用劇場でロングラン公演というステージ・エンターテインメントビジネスが成功している一方で、
公共ホールなどの多目的な会場の多くが苦戦しています。
専用劇場というのは劇団四季の「キャッツ」専用の円形劇場をはじめ、
東京ディズニーリゾート隣にオープンしたシルク・ドゥ・ソレイユ専用の「シアター東京」、
また「BLUE MAN GROUP」のために作られた六本木の専用シアター「インボイス劇場」など。
ちなみにBLUE MANは大量に水を使うためステージには排水溝まで装備され、
前列席には水が飛んでくるのでポンチョ着用のシートまであるくらいです。
ただ、こうした専用劇場でのエンターテインメントが連日多くの観客を集めているからといって、
公共ホールなどの多目的施設を専用劇場に作り替えるわけにもいきません。
お金もかかり、リスクもあるから、そう簡単にはできません。
だったら、こんなふうに考えてみてはどうでしょう。
専用劇場「成功のエッセンス」を採り入れられないか、と。
では、専用劇場の成功エッセンスとは何でしょう。
月並みな言い方をすれば「特色」を出すということ。独自性、斬新性です。
さらに、その「特色」とは何かと言えば、観客に新しい「経験」を提供することです。
驚きや意外性のある「経験」。コミュニケーションしたり参加できたりする「経験」を。
例えば、最近では演劇や映画で「香り発生装置」を採用し、
シーンに合わせて香りを発生させるといった試みも見られます。
映画「チャーリーとチョコレート工場」を上映した一部映画館では甘いチョコレートの香りを、
また芝居の特定のシーンになると花の香りを場内に漂わせて臨場感を高めているステージもあります。
視覚、聴覚、嗅覚とくれば次に考えられる「経験プログラム」といえば「触覚」。
その触覚に働きかけた例もあります。
音楽のビートを身体で感じられるシートを用意した映画やコンサートもそうですし、
また、聴覚障害者を招いたコンサートでバルーンを用意し、それを膝の上に抱えてもらい、
音楽を身体で感じられるようにした例もあります。
すごくシンプルな方法ですが、これはこれでとても素敵な「経験プログラム」だったのではないでしょうか。
3-29>観客同士のコミュニケーションはプロ野球に学べ
第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<29>
イベントの満足度を高めるためのコミュニケーション。
それを誰と誰とのコミュニケーションなのか、分けてみると次の三つのパターンがあると思います。
第一は出演者と観客との、第二は観客と会場には来ていない観客の友だち・家族との、
そして第三が会場の観客同士のコミュニケーションです。
一と二は見当がつくと思いますが、第三の観客同士のコミュニケーションとは何か。
コンサートではコレダ!というものは見当たりませんが、あえて挙げれば、アキバ系アイドルファンの応援スタイル。
いわゆる「オタ芸」。あれが近いところでしょうか。
アイドルを応援するための「掛け声」とか「振り付け」をファンが組織だって行うという。
それが結果として観客同士のコミュニケーションになっています。
もっと大がかりな観客同士のコミュニケーションはプロ野球に見られます。
何かと言うと、観客がゲーム中に一斉にする行為、ある応援活動と言えばもうおわかりでしょう。
ウェーブがそうです。
さらに極めつけは阪神タイガースファンによる六甲おろしの大合唱と直後のジェット風船飛ばし。
会話という形ではないけれど、こうした応援も一つの観客同士のコミュニケーションの形といえます。
名付けるなら「パフォーマンス型コミュニケーション」とでもいいましょうか。
このような観客同士のコミュニケーションは一体感を生み、熱狂をもたらします。
社会学者デュルケムの言う、人にとって最高の快楽「集合的沸騰」がそこにはあります。
ゲームを見るだけなら家でも見られるのに、わざわざ球場まで足を運ぶのはなぜか。
観戦するというよりも、ごひいきチームをみんなで応援する一体感を味わいたいからです。
一度これを経験したら病み付きになる人は少なくないのでしょう。
そう考えてみると六甲おろしの大合唱とジェット風船飛ばしというプログラムを持つ阪神タイガースの観客動員が二〇〇五年からずっとリーグトップであることもうなずけます。
観客同士のコミュニケーションが濃厚で、ゲームに参加している感が最も強いからこその集客力といえそうです。
つまり、観客同士のコミュニケーションの濃厚さやボルテージの高さによって満足度が左右され、動員数に現れる、という法則が成り立つわけです。
そして、この法則はコンサートにも当てはまると思います。
ならば音楽会場でも出演者への応援・声援という形で、観客同士がコミュニケーションできるプログラムや参加できるプログラムを考案してはどうでしょう。
いっせいに紙ヒコーキを飛ばす藤井フミヤさんのライブように、アキバ系アイドルファンのオタ芸のように。
イベントの満足度を高めるためのコミュニケーション。
それを誰と誰とのコミュニケーションなのか、分けてみると次の三つのパターンがあると思います。
第一は出演者と観客との、第二は観客と会場には来ていない観客の友だち・家族との、
そして第三が会場の観客同士のコミュニケーションです。
一と二は見当がつくと思いますが、第三の観客同士のコミュニケーションとは何か。
コンサートではコレダ!というものは見当たりませんが、あえて挙げれば、アキバ系アイドルファンの応援スタイル。
いわゆる「オタ芸」。あれが近いところでしょうか。
アイドルを応援するための「掛け声」とか「振り付け」をファンが組織だって行うという。
それが結果として観客同士のコミュニケーションになっています。
もっと大がかりな観客同士のコミュニケーションはプロ野球に見られます。
何かと言うと、観客がゲーム中に一斉にする行為、ある応援活動と言えばもうおわかりでしょう。
ウェーブがそうです。
さらに極めつけは阪神タイガースファンによる六甲おろしの大合唱と直後のジェット風船飛ばし。
会話という形ではないけれど、こうした応援も一つの観客同士のコミュニケーションの形といえます。
名付けるなら「パフォーマンス型コミュニケーション」とでもいいましょうか。
このような観客同士のコミュニケーションは一体感を生み、熱狂をもたらします。
社会学者デュルケムの言う、人にとって最高の快楽「集合的沸騰」がそこにはあります。
ゲームを見るだけなら家でも見られるのに、わざわざ球場まで足を運ぶのはなぜか。
観戦するというよりも、ごひいきチームをみんなで応援する一体感を味わいたいからです。
一度これを経験したら病み付きになる人は少なくないのでしょう。
そう考えてみると六甲おろしの大合唱とジェット風船飛ばしというプログラムを持つ阪神タイガースの観客動員が二〇〇五年からずっとリーグトップであることもうなずけます。
観客同士のコミュニケーションが濃厚で、ゲームに参加している感が最も強いからこその集客力といえそうです。
つまり、観客同士のコミュニケーションの濃厚さやボルテージの高さによって満足度が左右され、動員数に現れる、という法則が成り立つわけです。
そして、この法則はコンサートにも当てはまると思います。
ならば音楽会場でも出演者への応援・声援という形で、観客同士がコミュニケーションできるプログラムや参加できるプログラムを考案してはどうでしょう。
いっせいに紙ヒコーキを飛ばす藤井フミヤさんのライブように、アキバ系アイドルファンのオタ芸のように。
3-28>バックヤード・ツアーでコンサートの付加価値を高める
第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<28>
当然そういう「ふれあいタイム」や「バックヤード・ツアー」といったプログラムがあれば親近感は増します。
なぜなら人は少しでも慣れ親しんだ人や物事に肩入れをし、思い入れをするものだからです。
そうして親近感が増せば、期待感も高まり、期待して見るから本番のステージがいっそう感慨深いものになる―。
コミュニケーション・プログラムにはそういう好循環を生みだす力があります。
それでもってブロードウェイの劇場のバックヤード・ツアーみたいに入場料以外の収益まであげられるとなればいいことずくめです。
オーケストラの演奏会でバックヤード・ツアーそのものを有料化するのは大変かもしれませんが、バックヤード・ツアーに参加したいとか、公開リハーサルに立ち会いたいというニーズがあるのなら、それらに参加できる権利と本番公演をセットにしたスペシャルチケット(シート)を販売するという手も考えられなくはありません。
このアイデアはあくまでも一例ですが、コミュニケーション・プログラムを確立すれば、期待感と満足感を高め、そのうえ新たな収益まで得られる可能性だって十分あるということです。
経験プログラム、コミュニケーション・プログラムで付加価値を高め、その付加価値として得られた収益を歌舞伎の「幕見席」のような格安シートの設置に宛てれば、より多くの観客動員が図れますし、若手音楽家の勉強の場にもなるはずです。
3-27>歌舞伎の世界にあった現代的なマーケティング感覚とは
第3章~参加・経験・コミュニケーションはステージ・ビジネス成功の鍵~<27>
プロ野球ではシートの価格設定を見直した球団があります。
「価格(PRICE)戦略」というのはマーケティングの4Pの一つとして大事な集客戦略です。
それで、どう見直したかというと、従来よりもシートのバリエーションを増やしました。
例えば三千円・五千円・一万円の三種類だったとしたら、それを五種類、六種類に細分化、買いやすくしたのです。
多様化するニーズや広がる格差に対応したこのやり方でシーズン中の観客動員を回復させたそうです。
コンサートでもこうした価格の細分化を試してみる価値はありそうです。
できれば思い切って数百円のシートから数万円のシートまで幅を広げてはどうでしょう。
「そんなことしたら管理が面倒なことになる」と思われるかもしれません。
でも、そうなれば、従来のような十把ひとからげのサービスを見直す良い機会にもなります。
安価な席は安価な席なりの効率的なサービスを、高価な席は高価な席なりの高品質なサービス(ホスピタリティ)を提供する必要が出てくるからです。
効率的なサービスや高品質なサービスをあれこれ考案して実行するということは、新たなサービス体制や収益モデルを生み出すきっかけにもなります。
それはコンサート等の主催者にもホール運営者にとっても、サービスやホスピタリティのあり方を見直し集客力を強化するためのよい意味での試練になります。
シートの価格差を広げると平等性がなくなると言う意見もあるかもしれませんが、それは考え方次第。
幅広い層の人たちに門戸を広げられるメリットはあります。
なぜなら、金銭的な余裕がある人に高額で高付加価値のシート(チケット)を買ってもらえば、その分、学生とかフリーターといった金銭的に余裕がない人に向けて安価なシートを用意にすることができるからです。
実はこの考え方、決して新しいアイデアではありません。
歌舞伎の世界で昔からあるやり方です。
リッチな旦那衆は大枚払って「桟敷席」でお弁当を広げて優雅に見物してもらう。
反対に余裕のない人は「幕見席」で一幕だけ見る、という。
ちなみに「幕見」とは、三幕で構成されることの多い歌舞伎の一幕に限り格安料金(数百円~)で鑑賞できる席のこと。
役者志望の学生や若手芸人などに重宝されているようです。
また、幕見席は「通の人が通う席」ともいわれていて、「前に見たあの名場面をもう一度…」といったニーズや、「今日は時間があまり無いけれど少しだけ見たい…」といった、きめ細かなニーズにも応える、実によく考えられたシステムです。
現代的なマーケティング感覚が伝統芸能の歌舞伎にあったなんて本当に驚きですね。
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